| 10.成果主義賃金 |
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成果主義賃金 「給料を上げれば従業員はよく仕事をする」などと言った考えは正しくない。本当によく仕事をする人は給料のことなど気にしてない場合が殆どだ。しかし同時に、人は自分の成果を正しく評価してもらいたいと思っているし、日産やGEなど成長している会社の多くは、成果に応じて報酬を与え、またそうすることにより会社を発展させてきた。 ■人は正しく評価されることを望んでいる 「企業の目的は利益を上げることだ。利益を上げるには売上を上げるかコストを下げるしかない。コストを下げるにあたって一番大きな比重を占めるのが労務費だ。賃金制度・評価制度の見直しの目的は労務費を最小にすることだ。」などと心のどこかで思っている社長の将来は暗い。 賃金制度・評価制度を作るのは、従業員に意欲的に仕事をしてもらうためだ。社長は労務費を最小にすることを考えるより、自社の従業員の給料を地域で一番にすることに知恵を使うべきだ。給料が地域で最低の会社にいい人材が集まるはずがない。ビジネスは詰まるところ人だ。それは中小企業の社長が一番良く知っている。それなのに、こと給料のことになると下げることばかり考えている社長が多い。 今まで何度も述べてきたように、人は給料が高いから一生懸命働くわけではない。しかし、一生懸命働いて成果も出しているのに、そうでない人に比べて給料が低いと不満が溜まる。人は正しく評価されることを望んでいるのだ。 ■中小企業の賃金制度の実態 中小企業に伺うと、そもそも賃金制度・評価制度すらない会社が多い。社長のいちぞんで給料の額が決められている。実際に日々従業員をマネージしている管理職も気の毒だ。管理職が従業員に努力に報いてあげる手立てを持っていないのだから。 賃金制度がある会社でも、給料体系が複雑な場合が多い。基本給の他に、役付手当、資格手当、調整手当、特別手当など、いろんな種類の手当がある。そして基本給の賃金テーブル以外にもそれぞれの手当にテーブルがある。これを社長が鉛筆をなめなめしながら、いろんな手当てをバランスさせ、各人に相応しいと思われる給料を決定している。 特に問題があるのは、調整手当とか特別手当とかといった「支給額は適宜会社が決定する」と定められた手当だ。従業員側もそれがどのような理由で支給されているのか説明されている場合は少ないし、それを決定した社長自身でさえそのような手当てをつけ出した理由すら忘れていることも多い。 中小企業には人事専任者などいないのが殆どだ。人事まわりの事は社長が一人で行わなければならない。大企業が使っているような賃金テーブルを社長一人で運用できるはずがない。 ■シンプルでオープンな賃金制度・評価制度 中小企業の賃金制度・評価制度として大切なことは、先ずシンプルであることだ。賃金を決定する上で何らかのテーブルは必要であり、社員段階も4〜5の階層を考えておく必要があろうが、賃金テーブル自体は一枚で十分である。また、そうしなければ社長一人で運用などできない。通勤手当や夜勤手当など、支払理由の明確な手当以外の所定内賃金は原則基本給に一本化すべきである。 評価制度においてもシンプルでオープンが原則だ。評価項目が何十もあって、その評価もやたら細かく明文化されているような制度は使えない。従業員に何をやってもらいたいのか、また何で評価するのかを明確にし、それを従業員にも分かる言葉で表現することが大切だ。 評価項目を「協調性」などとするより、「周りの人への気配りや気働きは十分か」とか「周りの人の仕事を進んで手助けしたか」というように、社長自身が従業員に期待する行動を、社長の言葉で書くほうがよい。 これらの評価項目を決定する際に従業員側に「何を評価してもらいたいか」「何を評価してもらえたら仕事に対するやる気が出るか」などを事前にヒアリングする方法もある。そうすることで評価制度が更にオープンになり納得性の高いものになる。 評価にとって一番大切なのは「納得性」である。結局は人が人を評価するのだから、100%公平で客観的な評価などありえない。そして、個々人の納得性を高めるための方法であれば、知恵を絞れば出てくる。 ■成果をどう測定するか 成果主義賃金を導入する際に一番問題になるのが成果をどう評価するかという点である。そして成果を評価するためには、何をどの程度達成したら評価するのかという具体的な指標をあらかじめ決めておく必要がある。 何(指標)を評価するかとは、即ち「社長が何をしてもらいたいか、それを達成したら会社に貢献したことになり報酬もはずみますよ」と言えるものだ。それは可能な限り数値目標であることが望ましい。売上高、コスト削減額、不良率といったものである。 しかし、スタッフ部門であるとか、若い担当者であるとかの場合、数値目標を設定しにくい場合がある。そんな場合には定性的な目標の、その達成状態を可能なかぎり明確にイメージし、記述化することだ。例えば、経理部門であれば、「伝票処理マニュアルを作成し、営業担当者からの伝票処理に関する問い合わせを現在の10分の1にまで低減する」といったように。 ■評価制度の限界と目的 いくら明確な指標を設定しても成果評価の限界はある。環境は常に変わり期初に立てた目標など期が始まったとたんに変更しなければならない場合も多い。能力の評価にしても、どんなに評価項目を精査してみた所で、業務遂行能力の全てを適切に評価することなどできない。 誤解を恐れずに言えば、人間の評価など短期の成果とは無関係に、また能力評価項目の評価点数とは無関係に全人的に決まっているとも言える。つまり、その人とその人の働きぶりを見れば、その人が会社に貢献している人であるかどうかは明らかなのである。 では何のために評価制度はあるのか。それは、具体的な成果評価の指標や能力評価の評価項目を決めることにより、従業員が社長の望む方向に向かって行動するようにしむけることなのだ。 また、評価シートを用いて部下と面談し、部下の行動の何が優れていて何が劣っているのかを、部下と一緒に話し合い納得させ、部下との信頼関係を構築することなのだ。 賃金制度も評価制度も限界や問題がある。しかし、社長や上司が従業員と良く話しあい、それぞれの長所と短所を認識し、企業の目標達成のためにそれぞれの問題点を是正し、素晴らしい信頼関係とチームワークを作ってゆく、そんなことために賃金制度や評価制度はあるのだと私は思っている。
もしそうであるならば、制度をオープンにし、評価のフィードバックをしてゆくことこそが賃金制度・評価制度の一番大切なポイントではなかろうか。
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