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EQ(こころの知能指数)
人生の成功の80%を決めるものとは何か
知的能力のIQ
(Intellectual
Quotient)に対して、EQ(Emotional
Quotient)は「こころの知能指数」と呼ぶ。EQとは自分の感情を自覚、コントロールして、周囲の人たちと良好な人間関係を築く能力のことであり、仕事で結果を出す人たちは、これが高いことが知られている。会社のリーダーである経営者には求められる能力だ。
■EQとは何か
幸せな人生を送るためには、しっかり勉強し、いい学校に入り、いい会社に就職しなければならないと言われてきた。日本には、勉強ができるかどうか、頭が良いか悪いかで人生の成功が決まるという価値観が根強くある。
確かにIQ(知能指数)と生活水準の間には相関関係がある。しかし、頭のいい人が必ずしも社会に出て成功するわけではない。むしろ例外のほうが多い。今回のテーマである「EQ」の研究者達は「人生を成功に導く要因のうち、IQが関係するのは多く見積もってせいぜい20%どまりだろう」と言っている。
このことを裏付けるようなデータがある。私が勤めていた会社では毎年新入社員にIQテストをさせていた。1990年当時人事部にいた私は、1970年入社の人達のIQと、その後20年間の会社での出世具合をグラフにしてみた。結果は下図のようなものだった。IQと出世には全く相関関係がなかったのだ。
アメリカの研究機関で働く研究者の中で、いつも成果を出すグループとそうでないグループがいた。いつも成果を出すグループはとりたててIQが高いというわけではなく、自分の感情を理解し調整したり、回りの人達と良好な人間関係を築いたりする能力に優れていた。このような人間の感情に係わる能力を、知的能力のIQ(Intellectual
Quotient)に対して、EQ(Emotional Quotient)「こころの知能指数」と呼んでいる。
EQは、エール大学のピーター・サロベイ博士とニューハンプシャー大学のジョン・メイヤー博士が1989年の発表した論文「Emotional
Intelligence」をベースに、ハーバード大学で心理学を修めたジャーナリスト、ダニエル・ゴールマンが1996年に「EQこころの知能指数」を出版し、世界的に有名になった概念だ。
EQには次の4つの領域がある。
1.
自分の感情を認識する
2.
自分の感情をコントロールする
3.
他社の気持を認識する
4.
人間関係を適切に管理する
どれもが人間の心や感情に関係する能力だ。
■現実社会の中でのEQ能力
EQ能力は全ての階層のビジネスマンにとって必要な能力だが、地位が上がれば上がるほど大切になってくる。リーダーシップに関する古今東西の膨大な研究成果によれば、リーダーにとって大切な能力は次の二つの軸にまとめられる(「『はげまし』の経営学」金井嘉宏著 宝島社新書)。
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課題関連の能力
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人間関連の能力
つまり「課題を達成する能力」と「人々のやる気を高め巻き込んでゆく能力」がリーダーにとって大切なのだ。
星野監督を例にとるまでもなく、優れたリーダーは目標達成にコミットする厳しさを持つと同時に人の心を動かす。今年のペナントレースを振り返ってみても、勝つことに拘る星野監督の厳しい表情が思い出される。
同時に、相手の立場に立った思い遣りのある采配や言動が私達の記憶に残っている。阪神―巨人最終戦で、原監督に送った「くじけるなよ。勉強せいよ。」の言葉は、あの場面を見ている人達の目頭までも熱くさせた。去ることになった若き監督へ向けた、星野監督の温かな思い遣りが伝わってきたからだ。
「どんな商売でも、最後は人と人。IT(情報技術)がどれだけ進歩しても、それは変わらない。人と人は心と心だと思っています。」と星野監督は言う(日経ビジネス2003年10月20日号)。成果を出す人は、人の心や感情に関心を持ち、影響を与えることが出来る人なのだ。
■モチベーションとEQ能力
この連載の第一回に、「経営者・管理者にとって一番大切なことは部下のやる気を高めることだ」と書いた。「やる気・モチベーション・動機づけ」は経営者・管理者にとって最大のそして永遠のテーマだ。
動機づけの方法としては、外的動機づけと内的動機づけがある。外的動機づけとは、仕事以外の道具を使って動機づけしようというものである。給与や厳しい命令などがそれである。つまりアメとムチだ。
外的動機づけは「仕事は厳しく大変なものである」という仮定がベースにある。やりたくない仕事をさせるのだから、アメとムチが必要だというのだ。
しかし、アメ(給与)が動機づけの道具として機能しないことは既に研究によって明らかにされている。ユタ大学のフレデリック・ハーズバーグ教授は、動機づけになると考えられてきた要素を、「動機づけ要因」と「衛生要因」に分類した。
「動機づけ要因」は、そのことが増せば動機づけされるが、そのことがなくてもあまり不満とはならないものである。達成・承認・責任・成長などの要因がそれにあたる。逆に「衛生要因」とは、その要因が充分でなければ不満になるが、そのことが充分であっても動機づけにはならないものであり、会社の方針・労働条件・給与などの要因がそれである。
給与は衛生要因に分類される。つまり、給与が低いと従業員は不満足を感じるが、給料を高くしたからといって、それが仕事への動機づけに繋がるわけではないということだ。
この研究から、部下を動機づけするためには「仕事の中での達成感」・「承認」・「仕事への責任」・「仕事を通しての成長の機会」などを与える必要があることがわかる。
「仕事自体が楽しい」「心からやる気が起きる」という状態を、内的に動機づけされた状態という。内的動機づけには、感情の動きが伴う。人に感情を動かすためには、信頼・愛情・情熱といった非常に人間的なものが大切になる。これはまさに星野監督がこの1年間身をもって示してきたEQ的な能力のことである。
■EQ能力の検査とその活用
IQを変えることは難しいが、EQ能力は経験・教育・訓練によって開発できると言われている。EQ能力を仔細に分析すれば、持って生まれた性格に関係するものもある。しかし、星野監督が生まれながらにして今のようなEQ能力を持っていたかというと決してそうではない。星野監督のEQ能力は経験によって育まれたものだ。そうであるなら、我々も経験・教育・訓練によってEQ能力を開発できるはずである。
日本では、株式会社EQジャパン(03-5574-8333, http://www.eqj.co.jp)がEQ能力検査テスト(EQI)を開発している。EQIは既に大手企業を中心に1200社以上、約10万人が受験している。興味のある方は活用されてはいかがか。
以上
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