| 8.生産性向上 |
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生産性向上 今、あなたの目の前で、一人の幹部社員が事務所の天井をじっと見つめているとする。この人が真剣に営業戦略を考えているのか、ただボーっとしているだけなのか、本当のところは誰にも判断できない。頭を使ってする仕事の生産性は目に見えない。では幹部社員の生産性を高めるためには何が大切なのだろうか。 ■幹部社員の生産性は管理できない 生産性向上というと生産現場での生産性を思い浮かべる方が多いと思うが、今回のテーマは事務職の生産性向上、それも特に、課題解決を行う幹部社員の生産性向上について述べる。 日本の工場労働者の生産性は世界一だと言われている。一方、営業・総務・企画など日本の事務職の生産性は世界レベルよりはるかに低いというのが定説だ。 生産現場では生産性を上げるために、作業のムダやムラを取り除いてゆく。事務職の場合でも、帳票作成を効率化したり、ムダな会議を減らしたりして生産性を上げることはできる。 ただ、戦略を策定したり、複雑な問題を解決したりする幹部社員の生産性を高めるための方法論については、これといった明快な答がない。 上のリードに述べたように、考えている人の頭の中は外からは見えないし、頭脳労働の各過程を外からコントロールすることはできない。つまり、幹部社員の生産性は管理できないのだ。 ■目標達成に執着する厳しい企業風土 頭脳労働の各過程を外からコントロールできない以上、幹部社員の生産性を高めるためには成果重視の組織風土を作るしかない。「好きなようにやって下さい。大切なのは成果だけですから。」というマネージメントが幹部社員には適している。 私は常々日本のサラリーマン社会は厳しさが足りないと感じている。それは、終身雇用や年功的な給与制度のためかもしれないし、農耕民族的な村社会文化のせいかもしれない。 私は企業研修で中間管理職の方に次のようなロールプレイングをして頂く。「あなたは10人の部下がいる部門の長で、売上・利益の全責任を持っている。ある日、あなたの一番優秀な部下が退職したいと言って相談に来た。その時あなたはどう対応しますか。」というものだ。 私の管理職研修が、部下との良好な関係を構築するための「部下への思い遣り」を強調しているせいもあってか、この退職のロールプレイングが始まっても、中間管理職の皆さんは懇々と退職の理由を聞いている。 私はいつも、これら中間管理職の方は自分の損益責任というものをどう考えているのか疑問に思う。営業部門でも技術部門でも、部門の一番優秀なヤツが辞めると大変なことになる。 同じテーマのロールプレイングを社長が集まる研修でやると社長達の言うことは全く異なる。「何を寝ぼけたこと言ってんだ!」といって首を絞めるマネをしたりする社長がいる。 こんな姿を見ると、「この社長は部下といい関係を作っているんだろうな」と思う。そして更に、「成果を出せないとどんなことになるかという厳しい現実を身にしみて分かっておられるんだな。」と感じる。社長にとって、目標達成など当たり前のことなのだ。目標を達成できないと、従業員とその家族が路頭に迷うのだ。 この社長達と同じような緊迫感を持って仕事をしているサラリーマンが日本にどれくらいいるだろうか。だから日本のサラリーマンは生産性が低いのだ。 日本のサラリーマンに比べると、欧米のサラリーマンの方が成果に対する意識が高い。それは、彼らは成果を出せなければ簡単に首を切られるからだ。欧米のサラリーマンは一般的に残業しない。だからといってアウトプットが少ないわけではない。その分朝の早い人が多い。多くの人が7時前に事務所に出ている。彼らは常に効率、成果を考えて仕事をしているのだ。 ■「すみません」と謝る前にすることは山ほどある 私の顧問先であるイタリアレストランチェーンで、私は黒字が出ない店の店長さんにこんな話をする。「黒字が出ないと社長に『すみません』と言うでしょう。でも、店長はこの店の社長のようなものだ。普通社長の後ろには謝る人など居ない。社長はだれにも『すみません』なんて言えない。自分で責任をとるしかないのだ。『すみません』なんて言うとエネルギーが逃げて行く。それで許された気分になっちゃう。『すみません』などと言う前に這いつくばってでもやることあるでしょ!その這いつくばってやる姿勢がないと何をやっても成果なんか出せないよ。」と。 幹部社員の生産性を上げる、つまり成果を出すために大切なことは、どこまで本気になって仕事をしているかだ。論理的思考力のトレーニングだとかロジックツリーなどといった考えるためのテクニックやスキルを磨いても成果など出ない。世の中の課題がスキルやテクニックで解決できるならコンピューターに全てやってもらえばいい。詰まる所、仕事の成果は、どこまで腹を据えて仕事に取り組んでいるかにかかっているのだ。 皆さんにも経験がおありだと思う。何かの解決策を考えている場合、多少真剣に考えたぐらいではいい案が浮かばないが、本当に追い詰められて「これはどうにかしなければならない」と痛切に思えば、アイデアや解決策はいくらでも出てくる。 ■「自由にやらせること」と「追い込むこと」 本当に「やる気」になった時、人の生産性は飛躍的に高まる。では、どのような時に人はやる気になるのか。 昨年の12月号でEQ(心の知能指数)について書いた。EQ能力検査テスト(EQI)を受験すると、その人の仕事に対する「やる気」がどの程度か分かる。 私はEQ研修の最後に、EQ検査で「やる気」が高いと診断された人に現状の仕事内容や置かれた環境について発表してもらうことにしている。 今まで多くの人に発表頂いたが、「やる気」の高い人は全て次の2つのカテゴリーに入る。 1. 自由にやりたいことをやらせてもらえている環境にいる 2. 追い込まれた環境にいる 自由にやりたことをやらせてもらえている人とは、ある仕事を完全に任されているとか、頼る人も相談する人もいなくて、何事も自分で考え自分の思うようにやっているような人達である。 一方、追い込まれた人とは、自分が今までやってきた技術が時代に合わなくなり、会社からはもういらないと言われ、自分の存在意義をかけて新しい技術開発を行っているような人達である。 幹部社員の生産性をあげるには、「やりたいようにやらせる」ことと「追い込む」ことの二つの方法が有効である。いずれの場合にも大切なのは成果に対する拘りを持たせることである。
つまり、経営者の視点を持たせ、自分の後ろにはだれも「すみません」と言える人などないのだという気持ちで仕事をさせることだ。そんな人が多い会社は利益が上がっている。当たり前の話である。
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