| 1.人材開発の要 |
|
組織における人材開発の要とは何か 企業のある様々な課題を掘り下げてゆくと殆どが人材開発に突き当たる。人材開発のキーワードを上げれば、管理職教育、新人教育、リーダーシップ、モチベーション、目標管理、PDCA、マーケティング、イノベーション、戦略的思考、計数管理など限りない。企業のお客様からの評価も企業が成功するかどうかも、結局は従業員の質で決まってしまう。従業員の「やる気」と「能力」を高めることこそが企業の最重要の経営課題である。
人材開発をテーマに執筆する機会を頂いた。私は中小企業の社長の右腕として企業に入り込んでそれぞれの企業の課題を一つひとつ解決してゆくことを仕事にしている者である。元々技術屋でサラリーマン時代はプラントエンジニアからスタートし、人事・企画・海外事業担当など2〜3年おきに様々な部署を転々とした。その間、ピーター・ドラッカー先生が教えられていたアメリカの経営大学院で経営学の勉強をさせて頂いた。 サラリーマン生活に終止符を打ち事業を始めた頃、私のような中途半端な経歴で世の中の役に立つのだろうかと思っていた。しかし、何人かの中小企業の社長さんから自分の右腕として働いてもらえないかと言われた。経営における主要な仕事を分類すれば、@戦略・マーケティング、A人事・組織、B会計・財務の3つに分けられるが、それぞれは互いに関連しあっている。経営は言わば雑学の集大成のようなものであり、社長の立場に立てば、私のような雑多な経歴の者でも結構重宝されたのである。その後は社長と二人三脚で会社の課題解決にあたってきた。
雑学の集大成のような事業経営の中でも人材開発は誠に重要な課題である。企業の様々な課題も突き詰めれば全てが人材開発に突き当たるといっても過言ではないかもしれない。 企業の人材開発のテーマを思い浮かべれば、階層別教育としての管理職教育や新人教育。組織行動論でいうリーダーシップやモチベーション。人間のやる気の問題を少し深く突っ込めば、アメとムチによる外発的動機付けと仕事自体に喜びを与える内発的動機付け。能力向上の側面からは目標管理(MBO)、PDCA、一皮向ける経験など。企業の機能の面から見れば、マーケティングとイノベーションをどう社内に組み込むかという問題。経営的視点からは戦略的思考やビジネスの数字による管理についての教育など尽きる所がない。
留学時のドラッカー先生の最初の講義は次の質問から始まった。「今から100年前に世界中で学生数が多かった大学の名を3つ上げられるか?」だれからも答えが出ないのを見計らって言われた。「それは、アメリカのコロンビア大学、ドイツのベルリン大学、そして日本の東京大学だ。」(その時先生は当時の学生数も言われたが、私の記憶力が悪く学生数はすっかり忘れてしまった。)「私が言いたいのは、国家として国民の教育に力をいれていた国が100年後経済的に栄えているということだ。」当時ドラッカー先生は85歳で耳もかなり遠くなっておられたが、若い学生の教育に情熱を注がれていた。 ■従業員の「やる気」と「能力」を高める ドラッカー先生は企業のコンサルティングも数多く手がけておられたが、企業のコンサルティングを行う際に最初に企業の幹部に聞く質問はきまっていたという話しを聞いたことがある。それは「あなたの仕事は何ですか?」という問いだ。この問いに財務担当重役が「私は財務の管掌であり、借入金を減らすのが・・・」とか、営業担当重役が「私は新規顧客を開拓し売上を・・・」とか言うのを一通り聞いた後、ドラッカー先生は「皆さん少し観点が違いますね。経営幹部の方の一番大切な仕事は従業員のやる気と能力を高めることではありませんか。」と言っておられたそうだ。 もちろん企業が成功する理由は様々だ。商品のアイデアがいい。儲かる仕組みを作っている。色んな理由があるだろう。しかし、私自身多くの中小企業にお邪魔して、会社に入っただけでその会社が調子がいいか悪いかは直感的に分かる。調子のいい会社は社員が活き活きしている。
ドラッカー先生の話しはまだ続き、「国の経済が発展しているとはどういうことかね?国の経済が発展しているとはその国にやる気のある人が多いということだよ。」と言われた。技術屋で経済の仕組みが全く分かっていない私のような者には妙に納得のいく話しであった。 ■社長の人材開発に対する考え方 企業の評価は何で決まるか。末端の従業員の質で決まるのだ。顧客に最も近い従業員がお客様にどのような対応をしているか、どのような態度と考え方で商品を作っているか。そんなことで会社の評価は決まる。いくら社長の人格が優れ人望があっても、教育の行き届いた従業員がいなければ会社の評価がガタガタである。 企業の評価も成功するかどうかも全ては従業員の質で決まる。人材開発は企業にとって極めて重要な課題である。人材教育に関するテーマは星の数ほどあれど、企業における人材開発の要となるのは、社長の人材開発に関する考え方である。 中小企業の社長さんとお話をすると、「うちの社員はやる気がない」とか「意識が低い」とかと言われる社長さんが多い。「社長より優秀な人があなたの下で働くはずがないじゃないですか」と思ってしまう。社長の愚痴りたくなる気持ちは良く分かる。しかし、社長の愚痴は結局自分自身が人材開発について何も考えていないということを言っているだけのことなのだ。従業員の質が悪いのは社長に問題があると認識して頂きたい。 以上 |