| 5.やる気 |
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従業員の「やる気」を高めることが最優先の経営課題である
4月号の原稿でもご紹介した通り、経営陣の最も重要な経営課題は従業員のやる気と能力を高めることだ。やる気に満ち溢れた社員の集団とそうでない社員の集団ではアウトプットは100倍違うだろう。会議もそうだ。やる気のある社員が行う会議ではすぐに問題点が絞られ解決策がどんどん出てくる。しかし、やる気のない社員が行う会議は報告だけがダラダラと続く。では、人をやる気にするにはどうすればよいのだろうか。
■同じ人間なのに 仕事柄たくさんの会社にお邪魔するが、会社によって雰囲気は大きく異なる。社員が皆活き活きとしていて、上司からの指示があるわけではないのに、朝早くから出勤し夜遅くまで働いている職場がある一方で、社員の多くに活力がなく、話しをしてみると会社や上司・同僚に対する不満ばかりを口にする会社がある。 社長の発言も2種類ある。「うちの社員は皆本当に良く働いてくれる」と言う社長と、「うちの社員は危機感がなく言われたことしかやらない」と言う社長だ。前者の会社はおしなべて業績が良く、後者の会社は業績が良くない。 これら二つの会社の従業員を比較してみて、業績の良い会社に元々やる気も能力も高い社員ばかりが集まっていて、業績の悪い会社にそうでない社員ばかりが集まっているかというと決してそうではない。潜在的な能力や元々のやる気の高さは全く変りがないように思える。
■人は複雑な生きもの 中国の呉起将軍の話しをご存知だろうか。連戦連勝の呉起将軍が若い兵士の足に膿ができたのでそれを呉起将軍自らがひざまづいて吸ってやった。それを見ていた兵士のお母さんが悲しくて泣いたと言う話しだ。実は兵士のお父さん、つまり泣いているお母さんのご主人も若い頃呉起将軍に足の膿を吸ってもらった。そうすると、そのご主人は呉起将軍のためにいの一番に前線に出て戦い、死んでしまったのだ。そして、息子もお母さんが心配していた通りになったというお話だ。 膿を吸ってもらった換わりに命を投げ出すということは、論理的に考えれば割りが合わない話しである。しかし、人間というものはそういう行動をとる複雑な生きものなのだ。そんな複雑な人間をスキルやテクニックでコントロールできるはずがない。 人間をタイプ分けして、こういうタイプにはこう対応しろなどという研修がよくあるが、私から言わせればナンセンスだ。職場が移動して期待感にやる気を高める人もいれば不安でやる気が失せる人もいる。ある人を褒めたつもりが、その人の横にいた人がそれを聞いてやる気がなくなる場合もある。人は状況やタイミングや個性によってやる気が上がったり下がったりする。人のやる気を高めようと思えば、タイプ分けするのではなく、その人のことをしっかり見てあげ、その人を一人の人間として理解しようとしなければならない。
■人のやる気に影響する要因 研修で「どんな時にやる気が上がりましたか」と問うと「成果が出た」「認められた」「任された」「専門スキルが上がった」「思い通りにできる」「人間関係に恵まれた」などという答えが出てくる。 やる気に関わる研究で有名なハーズバーグの二要因理論によれば、人が仕事に満足を感じる要因は「達成」「承認」「責任」「成長」などである。ハーズバーグの研究は20年以上前のアメリカでの研究であるが、この理論は今の日本でも充分使える。仕事自体に面白い仕事とそうでない仕事があるわけではない。仕事が面白くなるのは、一生懸命仕事をして自分が成長し、何かを達成し、それが人に認められ、更なる大きな責任を任せられる時だ。
■アメとムチで人は動くか 人を動かすには昔からアメとムチなどと言われるが、アメとムチで人は動くだろうか。例えばムチだ。厳しい上司がいる場合、我々は叱られるのが怖いから一生懸命働く。しかし、その怖い上司が出張で居ない時はどうだろう。「今日は鬼が居ないから定時退社で飲みに行こうぜ」となるのが人間だろう。ムチはその威力が発揮されている時でないと効力を発しないのだ。 ではアメはどうだろう。我々は生きるため、家族を養うために働いているという側面がある。「これだけの成果を出したらボーナスをはずむぞ」などと言われたら一生懸命になったりする。ではもし、従業員の給料を毎年50%ずつ上げてみたらどうだろう。給料アップ分と同率で従業員は仕事を一生懸命やってくれたり仕事に対する満足度が高まるだろうか。給料の額と人のやる気との間にはあまり相関関係がない。
■内発的動機付け アメやムチを使って人をやる気にする方法を外発的動機付けと呼ぶ。仕事以外のアメやムチといった道具を使って人をやる気にする方法だ。しかし、我々は従業員が仕事自体に喜びを感じてくれるような内発的動機付けを与えることが大切だ。 内発的動機付け理論の大家であるエドワード・デシは人が仕事自体に喜びを感じる要因は「有能感」「自立的」「関係性」だと言っている。「自分は出来る」「思い通りにやっている」「周りの人とのいい関係が築けている」と感じる時、人は仕事へのやる気が高まるのである。 この3つの要因を与えてあげるのが上司の仕事である。一人ひとりの部下をよく観察し、適切な仕事を与え、仕事を任せ、日頃から良好な人間関係を作っておくことだ。
■上司がどこまで部下の立場でものを考えているか そして、そのためには上司が部下の立場にたって行動しているかどうかが大切だ。上司は指示的行動と支援的行動を部下の状況に合わせて適切に使わなければならない。しかし、現実には部下のことはお構いなしに上司は無意識に自分が好む行動をとっている場合が極めて多い。 指示することが好きな上司は経験ある部下に対しても指示することが多い。上から支援されることが好きな上司は、部下を突き放して一皮むけさせなければならない局面でもすぐに優しく手助けしてしまう。それがいいことだと思っているのだ。 上司が指示的行動と支援的行動のどのような組み合わせを好むかの診断テストがある。このテスト受けると、殆どの人は自分が好む単一の行動パターンだけを使っている。指示が好きな人は、能力ある人にも細かく指示する。指示も支援もしない、つまり任せるのが好きな人は支援すべき時にも「自分で考えろ」と言ってほったらかしにする。 そういう私も管理職になってからしばらくは、どんな部下がきても任せるマネジメントしか出来なかった。私自身任されるのが好きだったし、任せることで人は成長しやる気になるものだと思い込んでいた。しかし今思えば実際には部下を混乱させ、やる気を失わせていた場合も多かったように思う。 人がやる気にならないのは部下の問題というより、社長や上司の側に問題がある場合が多い。 以上
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